『流されやすい』から脱却!自分の意見を形作る思考トレーニング
マニュアル通りに動くことは、確かに効率や品質を保つ上で有効な場面があります。しかし、想定外の状況や正解がない場面に直面したとき、「自分で考えて動く」ことが求められます。このとき、多くのビジネスパーソンが感じる課題の一つに、「そもそも、自分には確固たる意見がない」「周囲の意見に流されやすい」というものがあります。
自分の意見を持つことは、単に議論で優位に立つことではありません。それは、状況を理解し、情報を整理し、自分の価値観や目的に照らして判断を下し、自信を持って行動するための基盤となります。この記事では、マニュアル依存から脱却し、自律的に考え動けるようになるために不可欠な「自分の意見を形作る」ための思考トレーニング方法をご紹介します。
なぜ「自分の意見」を持つことが難しいのか?
自分で意見を持つこと、そしてそれを言葉にすることには、いくつかのハードルが存在します。これらのハードルを理解することは、トレーニングの第一歩となります。
- 情報過多と判断疲れ: 現代は情報が溢れており、何が正しいのか、どう判断すれば良いのか迷いやすい状況です。多くの情報に触れる中で、自分の考えをまとめる前に疲れてしまい、他者の意見に頼ってしまうことがあります。
- 正解主義と失敗への恐れ: 「間違った意見を言ってはいけない」という意識が強いと、自分の意見を述べることに躊躇が生じます。特に経験が浅いと感じる場合や、権威ある立場の人を前にすると、自分の考えを引っ込めてしまいがちです。
- 内省や思考整理の不足: 自分の考えがなぜそうなのか、根拠は何なのかを深掘りする習慣がないと、漠然とした感覚で終わってしまい、確固たる意見にまで落とし込めません。
- 自分の価値観や目的の不明確さ: 何を重視するのか、何を目指すのかが曖昧だと、多様な選択肢や意見の中から、自分にとって最適なもの、あるいは自分が支持できるものを判断する軸が持てません。
自分の意見を形作るための基本的な思考ステップ
これらのハードルを乗り越え、自分の意見を育むためには、いくつかの基本的な思考ステップを踏むことが有効です。
- 情報収集と多角的なインプット: 自分の意見を持つためには、まず対象となるテーマに関する情報を集めることが不可欠です。ただし、一つの情報源に偏らず、意図的に異なる視点や意見に触れるようにします。賛成意見だけでなく、反対意見や批判的な見方も含めて情報収集を行います。
- 情報の整理と構造化: 集めた情報をただ並べるだけでなく、関係性を整理し、構造化します。何が事実で、何が推測か。原因と結果は何か。重要な点は何か。情報を要素分解したり、図解したりすることで、全体像と各要素の関連性がクリアになります。
- 「なぜそう思うのか?」の深掘り(根拠の探求): なぜ自分はその情報や意見に賛成(あるいは反対)なのか、その根拠は何なのかを掘り下げます。「なんとなく」ではなく、「〇〇というデータがあるから」「これまでの経験上、△△だったから」「××という原則に照らすと」のように、理由を明確にする訓練を行います。
- 自分の価値観や目的との照合: そのテーマや問題に対して、自分自身が何を大切にしたいのか、どのような結果を目指したいのかを考えます。自分の価値観や仕事における目的を判断軸の一つに加えることで、単なる情報や他者の意見の受け売りではない、自分ならではの意見が生まれます。
- 代替案や異なる可能性の検討: 自分の意見がある程度固まったら、それで終わりではありません。「本当にそうだろうか?」「他に可能性はないか?」「異なるアプローチならどうなるか?」と、あえて自分の意見を疑い、他の可能性や代替案を検討します。これにより、意見の解像度が高まり、より強固なものになります。
日常で取り組める「意見形成」思考トレーニング
これらのステップを踏むための思考力は、日々のちょっとした心がけやトレーニングで養うことができます。
- ニュースや出来事に対する「自分ならどうするか?」思考: 通勤中や休憩時間にニュースを見たり、職場で何か出来事が起きた際に、「これについて自分はどう思うか?」「もし自分が担当者ならどう対応するか?」と問いかけてみる習慣をつけます。すぐに答えが出なくても構いません。考えるプロセス自体がトレーニングになります。
- 短時間トレーニング例: 朝のニュースを見て、気になるトピックについて「賛成の立場」「反対の立場」それぞれの論点を1分ずつ考えてみる。
- ミニ論点設定と根拠探し: 会議や打ち合わせの内容、あるいは読んだ本や記事について、何か一つ「これはどういうことだろう?」「なぜこうなるのだろう?」という疑問や論点を見つけ、それに対する自分なりの答えと、その根拠を3分程度で探してみます。
- 「なぜなら」思考の習慣化: 自分の考えや意見を述べる際に、必ず「なぜなら、〇〇だからです」と理由を付け加えるように意識します。最初は簡単な理由でも構いません。この習慣が、根拠を探す思考を促します。
- 意見を言葉にする練習: 頭の中で考えたことを、声に出したり、短い文章にまとめたりして、言葉にする練習をします。家族や友人、信頼できる同僚に話してみるのも良いでしょう。言葉にすることで、思考の曖昧な部分が明確になります。
- 短時間トレーニング例: 今日気になったことについて、自分の考えをスマホのメモに3行で書いてみる。必ず最後に「なぜなら…」と理由を添える。
- 異なる意見への「理解しよう」姿勢: 自分と異なる意見に触れたとき、すぐに否定するのではなく、「この人はなぜそう考えるのだろう?」と、その背景や根拠を理解しようと努めます。これにより、自分の思考の偏りに気づいたり、新たな視点を取り入れたりすることができます。
自分の意見を持ち、自律的に動くために
自分の意見を持つことは、マニュアルからの脱却だけでなく、自己成長やキャリア形成においても重要な要素です。自分の考えを自信を持って表現できるようになれば、議論への貢献度が高まり、周囲からの信頼も得やすくなります。また、自分で考え判断できることは、変化の速い現代において、新しい状況にも臆せず対応できる力となります。
最初は、漠然とした感想しか持てないかもしれません。しかし、今回ご紹介したようなステップやトレーニングを日々の習慣に取り入れることで、徐々に物事を深く考え、自分なりの視点や根拠に基づいた意見を形作れるようになります。完璧を目指す必要はありません。まずは、小さな問いを立て、自分なりの答えを探すことから始めてみてはいかがでしょうか。その一歩一歩が、あなたの「考える力」と「自律的に動く力」を確実に育てていくはずです。