『何をすれば?』をなくす!マニュアル外で役立つ、目標設定と計画立案の思考法
はじめに:マニュアルがなくても「次に何をすべきか」を見つけるには
日々の業務において、マニュアルは非常に役立ちます。しかし、想定外の事態や新しい課題に直面した際、「マニュアルに載っていない」「次に何をすればいいのか分からない」と立ち止まってしまうことはないでしょうか。指示を待つのではなく、自ら状況を打開し、成果を生み出すためには、「目標設定」と「計画立案」の力が不可欠です。
この二つのスキルは、単に手順を決めるだけでなく、目の前の漠然とした状況から具体的な「目指すべき状態」を見つけ出し、そこに至る道筋を自分で描き出す思考プロセスです。マニュアルがないからこそ、この自分で考え、行動を組み立てる力が問われます。
この記事では、マニュアル外の状況でも役立つ、目標設定と計画立案のための具体的な思考法と、それを日々の業務で実践し、磨いていくためのヒントをご紹介します。
なぜマニュアル外で「目標設定」と「計画立案」が必要なのか
マニュアルは、特定の状況やタスクに対して最適な手順を示してくれます。しかし、マニュアル外の状況では、「何を目指すのか」が曖昧になりがちです。
例えば、 * 既存のマニュアルが通用しない顧客からの複雑な問い合わせ * 前例のない新しいプロジェクトの立ち上げ * 急な担当変更による引き継ぎ業務
このような状況では、まず「最終的にどのような状態にしたいか(目標)」を自分で定義する必要があります。その目標が明確になれば、次に「どのようにすればその状態にたどり着けるか(計画)」を考えることができます。
目標設定と計画立案は、単なるタスク管理ではなく、 * 目指すべき方向性を明確にする: 迷いや不安を減らし、進むべき道を自分で定めることができます。 * 必要な行動を自分で見つけ出す: 指示を待つことなく、状況に応じた最適な行動を自ら選択できるようになります。 * 進捗を自分で管理し、調整する: 計画通りに進んでいるかを確認し、必要に応じてやり方を変える柔軟性が生まれます。
つまり、このスキルは、マニュアルがない海原で、羅針盤と航海計画を自分で作り出すようなものです。
マニュアル外で「目標」を見つけ出す思考法
マニュアルに書かれていない状況で「何を目標にするか」を考えるのは、最初は難しく感じるかもしれません。しかし、いくつかの思考のヒントがあります。
1. 大局的な視点からブレークダウンする
自分が担当している業務や置かれている状況は、必ず会社やチームのより大きな目標の一部です。まずは、その大きな目標や、自分の役割が貢献すべき全体像を理解することから始めましょう。
例えば、 * 会社の年間目標は何か? * 所属部署の今期の重点目標は何か? * 自分のチームに求められている成果は何か?
これらの上位目標や、顧客にとっての理想的な状態、解決すべき根本的な課題などを踏まえ、「この状況において、自分が貢献できる最適なゴールは何か?」「この課題を解決することで、誰がどのように良くなるのか?」と問いかけてみてください。マニュアルにない状況でも、必ず何らかの背景や目的が存在します。
2. 理想の状態を描く「未来思考」
現在の課題や状況から出発するだけでなく、「もしこれが理想的に解決したら、どうなっているだろう?」と、未来の望ましい状態を具体的に想像してみます。
- お客様はどのような表情をしているだろうか?
- 関係者はどのように感じているだろうか?
- 自分自身はどのような成果を得ているだろうか?
- この問題が解決したら、次にどのような良い影響があるだろうか?
ポジティブな未来の状態を具体的に描くことで、そこへ到達するための具体的な目標が見えてきます。
3. 目標を「具体的」かつ「測定可能」にする
見えてきた目標は、曖昧なままにせず、できる限り具体的に、そして達成できたかどうかを判断できる形に落とし込みます。有名な「SMART」の原則が参考になります。
- Specific (具体的に): 何を、誰が、どのようにするのか?
- Measurable (測定可能に): 達成度をどうやって測るのか? 数値目標などを設定できるか?
- Achievable (達成可能に): 現状の自分の能力やリソースで、無理なく達成できる範囲か?
- Relevant (関連性): 上位目標や、自分にとって意味のあることか?
- Time-bound (期限を設ける): いつまでに達成するのか?
例えば、「お客様に喜んでもらう」という目標を、「〇月〇日までに、△△という課題を解決し、お客様から感謝のメールをいただく」のように具体化することで、達成に向けた行動が明確になります。
マニュアル外で「計画」を組み立てる思考プロセス
目標が定まったら、次にそこへたどり着くための計画を立てます。これもマニュアルがない状況では、自分でゼロから考える必要があります。
1. 目標達成に必要な要素を分解する「分解思考」
目標達成のために必要なステップやタスクを、思いつく限り細かく分解していきます。
- 目標達成までに通過すべき中間地点は何か?
- どのような情報が必要か?
- 誰に協力を求めるべきか?
- どのようなスキルや知識が自分に不足しているか?
- 具体的にどのような作業が必要か?
大きな目標を、今日、明日、今週でできる小さなタスクに分解することで、取り組みやすくなります。
2. 優先順位を考える「優先順位付け思考」
洗い出したタスクすべてを同時に行うことはできません。目標達成にとって、何が最も重要で、何を最初に行うべきかを判断します。
- 目標達成に直接的に繋がるタスクはどれか?
- 他のタスクの前提となるタスクはどれか?
- 時間的な制約は?
- 着手が簡単なタスクはどれか?(最初の一歩を踏み出しやすくするため)
重要度と緊急度を組み合わせたマトリクスなどが、優先順位を考える上で役立つことがあります。
3. リソースとリスクを考慮する「現実的思考」
計画を実行するために、どのようなリソース(時間、予算、人、情報など)が必要か、そしてどのようなリスク(失敗の可能性、遅延、協力が得られないなど)があるかを事前に考えます。
- 必要なリソースは確保できるか?
- 予期せぬ問題が起きた場合、どう対処するか?
- 複数の選択肢を用意しておくべきか?
リソースの制約の中で最適な計画を立て、起こりうるリスクに対して事前に手を打っておくことで、計画の実行可能性が高まります。
4. 行動計画に落とし込む
分解し、優先順位をつけ、リソースやリスクを考慮したタスクを、具体的な行動計画に落とし込みます。
- いつ(When)までに、何を(What)するのか?
- 誰が(Who)担当するのか?(他者の協力が必要な場合)
- どのように(How)行うのか?
タスクリストを作成したり、カレンダーに組み込んだり、簡単なフローチャートを作成したりするなど、自分が最も管理しやすい形で計画を可視化することが重要です。
日々の業務で「目標設定・計画立案」スキルを磨くヒント
このスキルは、特別な状況のためだけにあるのではありません。日々の小さな業務の中で意識的に取り組むことで、自然と磨かれていきます。
- 朝一番に今日の「ミニ目標」を設定する: 今日一日で「これを達成したい」という具体的な目標を一つか二つ決め、そのために「何をすべきか」を考えます。
- 定例業務を「目標達成」視点で見直す: いつもやっている業務も、「この業務は何のために行っているのか?」「この業務を通じて、どのような目標に貢献できるか?」と考えてみます。より良い目標設定が見つかるかもしれません。
- 「もし〇〇だったら?」と仮説を立てる: 「もし顧客がこの反応を示したら、次に何をすべきか?」「もしこの情報が得られなかったら、どうする?」など、仮説に基づいた簡単な計画を頭の中で立てる練習をします。
- 達成したこと、できなかったことを振り返る: 計画通りに進んだか、目標は達成できたかを定期的に振り返ります。うまくいかなかった場合は、なぜかを考え、次の目標設定や計画立案に活かします。
- 小さなプロジェクトで実践する: 規模の小さい、自分で完結できる業務や個人的なタスク(例: 書類整理、新しいツールの習得)で、目標設定から計画立案、実行、振り返りまでの一連の流れを試してみます。
これらの練習は、通勤時間や休憩時間など、隙間時間にも行うことができます。完璧を目指す必要はありません。まずは「自分で考え、自分で決める」という意識を持って取り組むことが大切です。
さいごに
マニュアルは、効率的に業務を進める上で強力なツールですが、それに依存しすぎると思考停止を招く可能性があります。マニュアル外の状況で自ら目標を設定し、計画を立てる力は、不確実性の高い現代ビジネスにおいて、自身の市場価値を高め、仕事のやりがいを見出すための重要なスキルです。
最初から大きな目標を設定したり、完璧な計画を立てたりする必要はありません。まずは日々の小さなタスクから「これは何のためにやるのだろう?」「どうすればもっとうまくできるだろう?」と考え、自分で目標と簡単な計画を立てる練習を始めてみてください。
この積み重ねが、やがてマニュアルがない状況でも自信を持って行動できる「知恵」となり、あなたのビジネスパーソンとしての可能性を大きく広げるはずです。