マニュアル外の判断も自信を持って!論理的に『説明する力』を養う方法
なぜ、マニュアル外の状況で「説明する力」が重要なのか
日々の業務において、マニュアル通りの手順や定型の応答だけでは対応できない状況に直面することは少なくありません。顧客からの予期せぬ質問、関係部署との連携での調整、突発的なトラブルへの対応など、自分の頭で考え、判断を下す必要が出てきます。
しかし、そうした状況で下した自分の判断や、導き出した新しいアイデアを、相手に分かりやすく、そして納得してもらえるように伝えることに難しさを感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
マニュアルに頼れない場面では、自分の思考プロセスや結論を言語化し、他者に正確に伝える「説明する力」が不可欠です。この力は、単に情報を伝えるだけでなく、相手の理解を得て協力を引き出したり、自分の信頼性を高めたりするためにも役立ちます。指示待ちではなく、自ら考え行動するビジネスパーソンになるためには、自分の考えを論理的に整理し、伝えるスキルは欠かせない要素です。
この記事では、マニュアル外の状況でも自信を持って、論理的に説明する力を養うための具体的なステップと考え方をご紹介します。
論理的に説明するための基本的な考え方
論理的に説明するとは、感情論や思いつきではなく、根拠に基づいて話の筋道を立てて伝えることです。相手に「なるほど」と理解・納得してもらうためには、以下の点を意識することが基本となります。
- 結論を明確にする: まず何を伝えたいのか、一番重要なポイントは何なのかを最初に提示します。
- 根拠や理由を示す: なぜその結論に至ったのか、その判断の背景にある事実やデータ、自分の考えの根拠を明確にします。
- 具体例や事例を交える: 抽象的な説明だけでは伝わりにくい場合があります。具体的な状況や過去の事例に触れることで、相手はよりイメージしやすくなります。
- 話の繋がりを意識する: 各要素(結論、根拠、具体例)が分断せず、スムーズに繋がるように構成します。
これらの要素を整理するためのフレームワークとして、ビジネスシーンでよく活用される「PREP法」などが参考になります。
- Point(結論):最も伝えたいこと
- Reason(理由):なぜそう言えるのか
- Example(具体例):理由を裏付ける具体的な事実や事例
- Point(結論):改めて伝えたい結論を強調
もちろん、常にこのフレームワークに厳密に従う必要はありませんが、自分の話を組み立てる際の「型」として知っておくと役立ちます。
自分の思考を整理するトレーニング
論理的に説明するためには、まず自分自身が何を考え、どのように判断したのかを整理できていなければなりません。頭の中で漠然と考えているだけでは、いざ話そうとしても言葉に詰まったり、話が飛んだりしてしまいます。
ワーク1:5分でできる「A4一枚整理術」
会議での報告や上司への相談など、何かを説明する必要が出てきたら、説明する前にA4の紙やメモアプリを開き、以下の項目を箇条書きで書き出してみましょう。
- 今回のテーマ・課題: (例:〇〇プロジェクトの遅延について、新しい提案について)
- 自分の結論・提案: (例:リスケジュールが必要、新しいツールを導入したい)
- そう考えた理由・根拠: (例:〇〇のタスクに時間がかかっている、〇〇のデータが改善を示唆している)
- 具体的な内容・代替案など: (例:新しいスケジュール案、ツール導入のメリットとデメリット)
- 相手に何をしてほしいか(期待する反応): (例:スケジュール案の承認、ツールの検討許可)
この作業を素早く行う練習を繰り返すことで、短時間で自分の思考を整理する習慣が身につきます。項目立てて書くことで、話の漏れや重複を防ぐことができます。
ワーク2:日常の「なぜ?」を深掘りする習慣
「なぜだろう?」「つまりどういうことだろう?」と物事の背景や本質を考える習慣をつけましょう。例えば、ニュース記事を読んで「なぜこの政策が実施されるのだろう?」「その影響はどう考えられるだろう?」と自問自答してみます。日常業務でも、「なぜこの手順になっているのだろう?」「このやり方で本当に効率が良いのだろうか?」と疑問を持ち、自分なりの答えや仮説を立ててみるのです。この「なぜ?」を追求する思考が、説明する際の深い洞察や説得力のある根拠につながります。
相手に「伝わる」ための実践的ヒント
自分の頭の中で整理できたとしても、それが相手に伝わるとは限りません。相手の状況や背景を考慮した「伝え方」の工夫が必要です。
- 相手の立場や知識レベルを想像する: 話す相手は、あなたと同じ知識や前提を持っているとは限りません。相手が何を知っていて、何を知らないのか、何に関心があるのかを想像し、話す内容や使う言葉を選びましょう。専門用語を避けたり、必要な補足説明を加えたりすることが重要です。
- 具体的に、簡潔に: 抽象的な表現や回りくどい言い方は避け、具体的で分かりやすい言葉を選びます。話が長すぎると、相手は集中力を失ってしまいます。最も伝えたいこと、重要なポイントを絞って簡潔に話すことを心がけましょう。
- 視覚的な要素も活用する: 必要に応じて、図やグラフ、資料などを用いて説明を補強します。特に複雑な情報を伝える際には、視覚的な情報は理解を助けます。
- 相手の反応を見ながら調整する: 説明している最中も、相手の表情や相槌、質問などをよく観察しましょう。理解できていないようであれば、別の言葉で言い換えたり、例を変えたりと、その場で伝え方を調整する柔軟性も大切です。
短時間で説明力を鍛える日常の工夫
忙しい中でも説明力を意識的に鍛える方法はたくさんあります。
- 移動中の「仮想プレゼン」: 通勤時間などに、今日のタスクや昨日あった出来事について、「もし誰かに説明するとしたら?」と頭の中で構成を組み立ててみましょう。結論は何か、根拠は何か、どういう順序で話すのが分かりやすいか、などをシミュレーションします。
- メールやチャットでの報告を意識する: 報告や連絡をする際、単なる事実の羅列ではなく、「結論→理由→詳細」のような論理的な構成を意識して書いてみましょう。短文でも論理的な構造を心がける練習になります。
- 日常会話での「要約」練習: 誰かの話を聞いた後、「つまり〇〇ということですね」「〇〇がポイントということでしょうか」と、相手の話を要約して返す練習をします。これは相手の意図を正確に把握し、それを自分の言葉で整理するトレーニングになります。
失敗を恐れず、まずは試してみる
論理的に説明する力は、一朝一夕に身につくものではありません。最初はうまくいかないこともあるでしょう。話がまとまらなかったり、相手にうまく伝わらなかったりする経験を通して、自分の課題が見えてきます。
大切なのは、失敗を恐れずに「こう伝えてみよう」「この構成で話してみよう」と積極的に試してみることです。そして、うまくいかなかった場合には、「なぜ伝わらなかったのだろう?」「どうすればもっと分かりやすかっただろう?」と振り返り(内省)、次に活かすことです。
まとめ
マニュアル外の状況で自ら考え行動するためには、自分の思考や判断を論理的に整理し、他者に分かりやすく伝える「説明する力」が不可欠です。この記事で紹介した基本的な考え方、思考整理のワーク、伝えるためのヒント、そして日々のちょっとした工夫を実践することで、あなたの説明力は確実に向上していきます。
「伝わる説明」ができるようになれば、あなたの発言はより重みを持つようになり、周囲からの信頼も高まるでしょう。それは、指示待ちから脱却し、自律的に仕事を進めるための大きな力となります。今日からぜひ、意識して取り組んでみてください。