『何を質問すれば?』がなくなる!必要な情報を引き出す質問力の磨き方
マニュアル通りの業務から一歩踏み出し、未知の状況や予期せぬ問題に直面したとき、「一体何を質問すればいいのか分からない」と感じることは少なくありません。必要な情報を集め、状況を理解し、適切な判断を下すためには、質の高い質問をするスキルが不可欠です。この質問力は、マニュアル依存からの脱却を目指す上で、非常に重要な「知恵」の一つと言えるでしょう。
本記事では、マニュアル外の状況で役立つ質問力の重要性を解説し、具体的な質問の考え方や、日々の業務の中で質問力を磨くためのトレーニング方法をご紹介します。
なぜマニュアル外の状況で質問力が重要なのか
マニュアルが用意されていない状況では、必要な情報が手元に揃っていないことがほとんどです。このような状況で立ち止まらず、自ら考え行動するためには、以下の点で質問力が力を発揮します。
- 情報収集と理解の促進: 現状を把握し、課題を特定するために必要な情報を効率的に引き出すことができます。相手の考えや背景を深く理解する上でも質問は有効です。
- 思考の深化と整理: 自分の疑問点を明確にし、質問として言葉にすることで、自身の思考を整理し、論点を絞り込むことができます。他者からの回答によって、新たな視点や気づきを得ることもできます。
- 課題の本質特定: 表面的な事象だけでなく、その背後にある原因や構造を探るための掘り下げた質問は、問題の本質を見抜く手助けとなります。
- 関係性の構築: 適切な質問は、相手に「自分の話に関心を持ってもらえている」と感じさせ、信頼関係を築くきっかけにもなります。
質の高い質問をするための考え方
どのような質問が「質が高い」と言えるのでしょうか。それは、単に分からないことを尋ねるだけでなく、相手から有益な情報を引き出し、自分の思考や状況判断を前進させるための質問です。
質の高い質問には、いくつかの種類と目的があります。
- 状況把握のための質問:
- 「現状はどうなっていますか?」
- 「これまでの経緯を教えていただけますか?」
- 目的:事実関係を確認し、前提条件を共有する。
- 深掘りのための質問:
- 「なぜそのように考えたのですか?」
- 「具体的な例を挙げてもらえますか?」
- 「他にはどのような可能性がありますか?」
- 目的:背景、理由、詳細、代替案などを探り、理解を深める。
- 確認・要約のための質問:
- 「つまり、~ということで合っていますか?」
- 「〇〇が重要なポイントという理解でよろしいでしょうか?」
- 目的:自分の理解を確認し、誤解を防ぐ。情報の整理を促す。
- 思考を促す質問:
- 「もし〇〇だとしたら、どうなると思いますか?」
- 「この状況を別の視点で見ると、何か気づきはありますか?」
- 目的:相手や自分自身の思考を深め、新たな発想を引き出す。
オープンクエスチョン(答えが限定されない質問)とクローズドクエスチョン(「はい」「いいえ」などで答えられる質問)を使い分けることも重要です。情報収集の初期段階ではオープンクエスチョンで広く情報を集め、特定の事実確認や合意形成の場面ではクローズドクエスチョンを使うなど、目的に応じた選択が求められます。
質問力を磨くためのトレーニング方法
質問力は、意識的なトレーニングによって着実に向上させることができます。日々の業務や生活の中で実践できる方法をいくつかご紹介します。
1. 会議や打ち合わせでの「質問タイム」を意識する
最も実践しやすいのは、日常的なコミュニケーションの場を活用することです。会議や打ち合わせでは、ただ聞くだけでなく、最低一つは具体的な質問をすることを自分に課してみましょう。
- 準備する: 事前にアジェンダを確認し、「何が知りたいか」「何を確認すべきか」を考えておきます。これにより、漫然とした質問ではなく、目的に沿った質問がしやすくなります。
- 傾聴する: 相手の話を注意深く聞き、不明点や疑問点、さらに詳しく知りたい点にアンテナを張ります。話の背景や意図を読み取ろうと努める姿勢が、良い質問につながります。
- 「なぜ」「どのように」「具体的には」を意識: 話の中で気になる情報が出てきたら、「なぜそうなのですか?」「どのように進めるのですか?」「具体的には、どのような状況ですか?」といった深掘りする質問を投げかけてみましょう。
2. ニュースや書籍に「問いを立てる」練習
インプットの際にも質問力を鍛えることができます。ニュース記事やビジネス書などを読む際に、受動的に情報を受け取るだけでなく、能動的に問いを立ててみましょう。
- 内容の背景を問う: 「なぜ今、このニュースが取り上げられているのだろう?」「この著者はなぜこの主張をしているのだろう?」
- 関連性を問う: 「この記事の内容は、自分の業務とどう関係があるだろう?」「この考え方は、他の知識とどう繋がるだろう?」
- 批判的に問う: 「この記事の根拠は何だろう?」「この主張に反論するとしたら?」
このように自問自答することで、情報を鵜呑みにせず、多角的に捉える思考が養われ、それが他者への質問力にも繋がります。
3. 「分からない」を具体的に言葉にする練習
「分からないことが分からない」という状態は、質問する上での大きな壁です。まずは自分が何が分かっていないのかを具体的に整理する練習をします。
- 抱えている課題や知りたいことについて、現状分かっていること、不足している情報を書き出してみましょう。
- 不足している情報の中でも、特に重要だと思われる点、次に知るべき点を特定します。
- その「次に知るべき点」を明らかにするためには、誰に、何を尋ねるのが最も効果的かを考えます。
このプロセスを経ることで、「〇〇について、△△という情報はあるのですが、××の点について詳細が分からず、次のアクションに進めません。この××について教えていただけますか?」のように、具体性のある質問ができるようになります。
4. フィードバックを求める際に質問を活用する
自分の業務や考えについてフィードバックを求める際も、質問力を発揮する機会です。「どうでしたか?」と漠然と聞くのではなく、具体的な質問を投げかけましょう。
- 「〇〇の点について、特に気になった部分はありますか?」
- 「△△のやり方について、改善できる点はありますか?」
- 「もしよろしければ、私の説明で分かりにくかった部分を教えていただけますか?」
具体的な質問は、相手もフィードバックしやすくなり、より有益な情報が得られます。
短時間でできる!忙しい日の質問力ヒント
「そんなに時間はかけられない」という日でも、意識するだけで質問の質を高めるヒントがあります。
- 打ち合わせ直前に「これだけは聞く」リストを一つ作る: 長いリストは不要です。最も重要な疑問点を一つだけ書き出し、それに対する答えを得ることを目指します。
- 会話中に「つまり~ということですか?」と要約・確認する: 相手の話の区切りで、自分の理解を短くまとめて投げかけます。これにより、誤解を防ぎ、相手に「ちゃんと聞いている」という印象を与えられます。
- 分からないことを素直に伝える勇気を持つ: 分からないふりをしたり、分かったつもりになったりする方が、後々大きな問題につながります。「すみません、この点だけもう一度詳しく教えていただけますか?」と謙虚に尋ねることは、決して恥ずかしいことではありません。
質問力を磨くことが、自律的な行動に繋がる
マニュアルにない状況で「何を質問すれば?」という戸惑いは、多くのビジネスパーソンが経験することです。しかし、この質問力を意識的に磨くことで、必要な情報を自ら収集し、状況を正確に把握し、主体的に考え判断を下す力が養われます。
質の高い質問は、単に情報を得る手段に留まらず、思考を深め、関係性を築き、問題解決への道を切り拓く力となります。今回ご紹介したトレーニング方法を参考に、ぜひ今日から一つでも実践してみてください。質問する習慣は、あなたのビジネスにおける「知恵」を育み、マニュアル依存から脱却し、自律的に動ける人材へと成長させてくれるはずです。